■第2回 【肉食のルーツ】

今や日本において、肉料理の形態としては最も一般化したと言える焼肉。 そのルーツは朝鮮半島にあるのだが、最近では、焼肉は純日本料理だと 思っている若者も少なくないらしい。 ヨーロッパの日本料理店では、焼肉が正式メニューになっているところ も少なくないと言う。 焼肉は、終戦直後の日本において、それまで商品価値がなく、捨てられ るだけだった牛やブタの内臓を、在日朝鮮人らが故郷のやりかたにならって 料理しやがて生計の手段として商品化した――このことは前回にも簡単に 述べておいた。 今回はこの焼肉のルーツを、より深いところまで見てみたい。

在日朝鮮人が、日本において焼肉と言う料理を生み出しえた背景には 朝鮮半島に長い肉食文化の歴史があったことがある。 ちなみに、ジンギスカンのような丸く浅い鉄板鍋に、スキヤキのように タレに漬け込んだ肉や野菜を焼く料理を「プルコギ」というが、これは 元々は、直火(プル)で肉(コギ)を焼いて食う料理の総称であるというのが 専門家の説明によるところだ。 実際に在日朝鮮人は、カルビやロースなどの一般的な焼肉を、今も 「プルコギ」と呼ぶ。 本題に戻ろう。

朝鮮も昔は、日本と同じ仏教文化の国として、肉食禁止の風習があった。 これが、とある歴史的圧力が加わることで変わっていく。 それは、十三世紀から約一世紀あまりにおよんだ蒙古による支配である。 朝鮮半島は中国大陸に接し、常に大国の脅威にさらされてきたが 歴史的にはほとんど独立を保ってきた。 全土を外来勢力の支配下に置かれたのは、十三世紀の蒙古支配と 二十世紀前半の日本支配だけである。 蒙古の一世紀にわたる支配は苛烈を極めたと言われるが、それだけに 遊牧民族である彼らがもたらした肉食文化の影響も強く、それを禁じる 仏教の教えは形骸化した。 加えて十五世紀からは、時の為政者たちが「崇儒排仏」の政策をとる。 儒教を尊び(これは今も朝鮮半島の社会文化に根強い)、仏教を排すると いうもので、この時に肉食が自由となる。 以来、朝鮮の人々は肉料理の文化を様々な形で身につけるわけだ。

北部の朝鮮民族は、その昔、騎馬遊牧民として活躍した歴史もあるだが おそらく食していたであろう肉への嗜好遺伝子が、蒙古の影響と重なって その(肉食の)普及を助けたのだろうか…

蒙古、朝鮮という国々を経て、仏教という宗教の壁をも突き破りながら 肉食道は伝わった。 そして現在、それは世界トップクラスの経済の中で、ひとつの「産業」 として定着し、その栄華を極めている。 ここに肉食道の普遍性を感じてしまうのは筆者だけだろうか。 (KEN)

※プロフィール
KEN : ギャラとスコッチをこよなく愛する庶民派ライター。実家は焼肉屋。